ここ数日、ネズミや豚などの動物の体内で人の臓器を作製するという東京大学の中内啓光教授らによる研究チームの計画が、文部科学省に承認されたというニュースが世界中で話題になっています。
ドイツでも各メディアでかなり大きく取り上げられている印象です。
なぜ動物の体内で人の臓器を作る必要が?
まず、このニュースを聞いた時に、この分野に特に関わりのない大半の人は「お〜、なんだかすごそうな話」と第一印象として好印象を受けると思いますが、ふと「でもなぜ動物の体内で人の臓器を作る必要があるの?」という単純な疑問を次に抱くと思います。
もちろん「人間並みに知能の発達した動物を作ろう」とかそういった思惑があるわけではないようです(私は最初一瞬そういった目的かと思ってしまいました笑)。
あくまで目的は、人の臓器を作製できるようになることで臓器提供を待っている患者さんに臓器を届けることができる、という非常に崇高なものですね。私はこの分野に関しては素人ですが、なんでも、他の人から臓器提供を受けた場合に、もらった側の人の体が拒否反応を示したりする場合もあるとか。
そういった対策としても、動物の体内で作られた「中立な」臓器はもらった側の体に馴染みやすい、といったようなメリットもあるのかもしれませんね。
英語で報道しているドイツの国際的なメディア「Deutsche Welle (ドイチェ ヴェレ)」でも記事をトップページで公開していました。記事の一部を下記に訳して引用として使用させて頂きます。
日本の研究者は人の臓器を持つ生きた動物を作製する世界初の科学者となりそうだ。中内啓光氏は人の幹細胞をネズミに注入し、それを更に他の動物へと移植するつもりだ。
DEUTSCHE WELLE, NEWS, “Mutant rat-human births approved in Japan“, Date 31.07.2019, Author Alexander Pearson
世界が1つの国になればいいのに
余談ですが、Deutsche Welleのトップページって、ドイツ国内の政治的な話題や大きな事件/事故などのニュースの他に、海外系は大半が中東の戦争やアフリカからの難民などの物騒な話題が基本的に多い印象です。
そんなトップページに、今回この人の臓器を動物の体内で作るという日本の科学者の計画が承認されたというニュースが出ていて「発展していて平和な日本が母国でよかった」としみじみ感じました…。
本当、世界各地で毎日全く異なることが起きていますよね。「世界が1つの国になってしまえばフェアなのに」と言う考えを耳にしたことがあります。
先進医学に日々注力するという、こんなにも余裕のある国が複数存在することを考慮すると、一方で戦争や貧困により毎日生き延びることだけで精一杯な人々からしたら、現在のこの世は本当に不公平で不平等なのだろうな、と思います。
現実的にはそんなことは不可能だとわかってはいても、世界が1つの国になってしまえばいいのに、という考えには、こういった瞬間にふと納得がいきます。
倫理面で問題もありそう
…本題に戻りまして 🙂 今回この計画が承認されたということで、研究チームは計画の実現に向けて動いていくのではと思われますが、動物保護団体などが倫理的な問題として反発しそうだな、とも思いました。
私の理解が正しければ、この計画が実現されて実用化され始めたら「臓器を作製し取り出すためだけに育てる動物」という生き物が存在し始めるわけです。臓器を取り出したらおそらくその動物は死んでしまうのではないでしょうか。
食肉用の家畜と似た様なもの、とも受け取れるかもしれませんが、その動物視点でこのアイデアを見るとなんともかわいそうな気もします。
とは言え、これはあくまで推測なので、この話題については今後の進展にこれからも注目したいと思います。
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