テリーザ・メイはブレクジット後もアイルランドの開かれた国境を維持したい?ドイツ在住者がまとめる欧州の国境事情

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今回は、イギリスのEU離脱後もアイルランド&北アイルランド間で開かれた国境を維持する努力と、最終手段としてのバックストップの是非に関するニュースについてです。

英EU間合意の是非

ドイツのメルケル首相は5日、東京にてビジネス界のリーダーたちと対談し、3月29日の期限までの間にイギリスがEUと何らかの合意に達することは、政治的視点から見てまだまだ可能なはずだと、ドイツ人には珍しい楽観的な意見を述べたそうです。

一方で、イギリスのテリーザ・メイ首相はイギリスのEU離脱後もアイルランドと北アイルランド間で開かれた国境を維持するための話し合いと、最終手段としてのバックストップ案に関しての合意を進めています。

合意の期限までもう2ヶ月を切りました。この短い期間の間にイギリスとEU双方が納得のいく合意に達することは本当にできるのでしょうか。

英語で報道しているドイツの国際的なメディア「Deutsche Welle (ドイチェ ヴェレ)」でも記事が公開されていました。記事の一部を下記に訳して引用として使用させて頂きます。

アンゲラ・メルケルはイギリスのEU離脱に関して合意に達することはまだ可能なはずだと述べた。一方英首相テリーザ・メイはアイルランドとの開かれた国境に対するコミットメントは「揺るぎない」と述べた。しかしながら依然バックストップを微調整したい意向はある。

Deutsche Welle, NEWS, “‘Still time’ for Brexit solution, says Merkel“,Date 05.02.2019

まずは「アイルランドとの国境」や「バックストップ」について簡単におさらいしてみましょう。

この話題は結構複雑なトピックで、全てを詳細に説明することは難しいですが、ここではあくまでわかりやすさに焦点を当ててざっくりと簡単に説明します。

北アイルランドとアイルランド

そもそも、北アイルランドはイギリスに属していますのでイギリスがEUを離脱するとなると北アイルランドもEUを離脱する、ということになります。ところが、アイルランドはイギリスに属していないため、イギリスがEUを離脱してもアイルランドはEU加盟国として存続することになります。

日本人的には「イギリス」と聞くと留学先や旅行先としてポピュラーですし、イギリス好きな日本人も多いため数ある外国の中でもかなり理解の深い方だと思いますが、政治的や地理的な話になるとちょっとイマイチわかりにくい部分がありますよね…。

学生時代に世界史で習った記憶がまだ残っているかもしれませんが、イギリスの正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。

当時は「長ったらしい名前で覚えられない!テストに出ませんように」くらいにしか思っていませんでしたが(笑)今まさにブレクジット関連でイギリスやアイルランド、北アイルランドの話題を頻繁に耳にするようになり、徐々に理解を深めるようになると、この長ったらしい名前も腑に落ちるようになりますよね 😉

アイルランドと北アイルランドを隔てる国境は、両国がEU加盟国だった頃は開かれていました。

欧州を車や電車で旅するとよく実感できますが、EU加盟国間を移動する場合はパスポートのチェック等が一切なく、例えば「ここからドイツ」「ここからフランス」という看板が立っているだけで、国境を越えた感は正直全くありません。日本でいうところの、県境や市の境目を越えるような感覚です。これは本当に便利で、これこそEU加盟がもたらす最大のメリットのうちの1つだと言えるでしょう。

しかしながら、イギリス及び北アイルランドが離脱することで、地理的には国境を隔てて一続きなのに、北アイルランドはEU非加盟国でアイルランドはEU加盟国、という状況になってしまいます。

そのため再びEU加盟前のような、税関や検問所を伴う物理的な国境 – つまり「閉ざされた国境」へと逆戻りしてしまうことが、アイルランドと北アイルランド双方の政府と国民の最大の懸念点なのです。

歴史的背景

その理由の1つには歴史的背景があります。北アイルランドと言えば、1960年代から約30年間も続いた「The Troubles (北アイルランド紛争)」と呼ばれる市民戦争が記憶に新しいです。

イギリスから独立しアイルランドに帰属したいカトリック系の市民と、イギリスに留まりたいプロテスタント系の市民の間で紛争が勃発しました。3,000人を越える犠牲者を出した、イギリス近代史における最大のやっかいな政治問題となりました。

開かれた国境が平和を保っている

1998年の合意により紛争は終結し、それ以来北アイルランドとアイルランド間は物理的なチェックを伴わない、移動しやすい文字通りシームレスな国境となりました。そのおかげもあって、アイルランド島は今日まで平和を保つことができています。

こういった理由もあって、閉ざされた国境に逆戻りしてしまうことでアイルランド島の治安も悪化(=逆戻り)してしまうのではないか、という点が懸念なのです。

バックストップ

そこで話題になっているのが「バックストップ」。文字通り、セーフティネット的な意味合いです。

貿易や国境関連のテーマでEUとイギリスが合意案を見つけることなく3月29日に至ってしまったら、物理的に管理された国境が北アイルランドとアイルランド間に戻ってきてしまいます – これを是が非でも防ぐために、バックストップ案、つまりは「EU離脱後もイギリスはEUの関税同盟内には留まる」という案が最後の手段として話し合われています。

バックストップが合意されれば、離脱後もアイルランド島では今のようなシームレスな国境を保つことが可能になります。

EUの魅力 – 国境移動が超簡単

私がヨーロッパにものすごく魅力を感じた理由のうちの1つに「EU加盟国間での移動が、日本からの旅行客である私にとってもこんなにも簡単」と実感したことがありました。

日本で生まれ育った私にとって、他の国に行くというのは一大事。パスポートチェックや税関申告は当たり前、そして(まぁ日本が島国なので)飛行機で行くことは当たり前。

でも陸続きの欧州、しかもEU加盟国間では、国境を越えるのはある市から別の市に車でスーッと通過していくようなもの。先にも述べましたが、国名が書かれた看板があるだけで、EU国民であろうが外国人であろうが誰もチェックされませんし、そもそもバスや車、電車を止める必要もありません。

初めてドイツからバスでフランスに入った時は、パスポートを見せる準備ができていましたが、いとも何気なく国境を越えただけでパスポートなど全く必要なく、本当にびっくりしました。とは言え、国境を越えればそこはちゃんと外国で、確かに別の言語が話されていて雰囲気も異なります。

そこにすごく惹かれました。それぞれが魅力的で、多様な国々が陸続きになって作り上げる欧州。日本と全っ然違う!と思って虜になりました。

自国に住みながら日中は隣国で働く、といった、まるで首都圏の人々の生活のような(日中は東京、夜は郊外の地元へ帰るスタイル)生活をされる欧州人の方は国境エリアにはたくさんいらっしゃいますが、納得できます。特に、スイス人やデンマーク人は、ドイツの方が物価が安いため、スイス/デンマークに居住して働きますが、買い物はもっぱらドイツ、という人をよく見かけます(笑)経済的で、賢いですよね 😉

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